峡東 果樹王国エリア

JoyFuL No.052

桃の新たな可能性を追求

堀井俊彦さん
プロフィール

笛吹市一宮町
堀井俊彦さん(36) 
悦子さん(34) 綾斗くん(3)
東京都三鷹市より移住

日本一の桃の産地で知られる笛吹市一宮町。
この地の桃農家を継ぎ、人生を賭けた桃づくりをする
堀井さんの生活には、都会では得られない
文化レベルの高い暮らしがあります。

 代々、一宮町で桃の栽培を営む悦子さんのご実家。しかし15年前に父が、10年前に兄が亡くなり、農業を続けられない瀬戸際に追い込まれていました。当時、悦子さんとお付き合いしていた堀井さんは東京のIT系会社に勤めていましたが、「規模縮小してでも可能な限りやれるところまでやってみましょう。」と手を差し伸べ、毎週末東京から山梨に通いながらお手伝いをしたそうです。「平日は東京で仕事をして、金曜の夜から日曜の夜まで山梨で手伝いをする生活は体力的に厳しかったですね。」と当時の状況を振り返る堀井さんですが、お手伝いを始めて1年後、悦子さんと入籍を機に、東京の仕事を辞めて、山梨へ移住しました。
 「移住した当初は、社会のスピード感の違いに戸惑いました。農家なので、曜日感覚もありませんし、暇なときは何しようかなっていう感じでしたよ。でも最近ではそんな生活に慣れてしまって、仕事で東京に行くと疲れちゃいますね。都会の感性や感覚も大事ですが、それが全てではないと感じます。田舎でしか得られない文化レベルの高い暮らしが山梨ではできると思います」。その話の中で堀井さんが見せてくれたのが、家の広い庭にある堆肥小屋。桃の栽培で間引いた実や生活の中で食べ残したもの等を、そのままゴミにするのではなく、堆肥小屋を使い、形を変えて畑に戻す。自然と共存する循環型の暮らしができることは、山梨に移住して初めて気づいたと言います。「食べ物にしても、東京では頑張らないと鮮度が守られない食材が、山梨では簡単に手に入ってしまう。だから感覚が変わりますね。自然も素晴らしいこの山梨では豊かさの本質みたいなものが見えてくると思います。」と山梨の魅力を語っていただきました。

桃から人へ繋がるコミュニケーション

 千葉県柏市のサラリーマン家庭で育った堀井さん。当然、農業経験はありませんでした。「近所の農家の先輩方がほっとかなくて、よく面倒をみてくれました。この地域の人は皆優しくて、すぐに馴染めましたよ。」と当時を振り返っていました。今では桃の魅力に惹かれて、桃を使った様々な展開をしています。その一つが、直送を中心にした出荷体系です。「一宮町は東京までおよそ1、2時間で行ける場所ですが、一般的なルートで出荷すると東京の店頭に並ぶまで2、3日かかってしまいます。1年かけて大事に育ててきた桃なので、なるべく新鮮で美味しい状態でお客様に届けたい気持ちがあります。だから朝に収穫した完熟桃を即日お送りしています。」と桃農家としてのこだわりを教えていただきました。
 1年間仕事をしていても、お客様との接点は食べてもらう一瞬。しかし365日いろんな表情をしている桃を、生産者としてもっとPRしたいと考える堀井さん。「桃の花が満開に咲く時期には県内外から人を集めて、花見を開催します。毎年たくさんの人が来てくれて、色んな方々とコミュニケーションができます。この他にも東京の飲食店などとコラボして桃を使った商品を開発しています。生産のプロである農家と加工のプロである料理人がタッグを組んだら、美味しいものができると思いますね」。
 一宮町本都塚集落でも跡取りがいない農家が多いと話す堀井さんですが、ブラッシュアップして、次の代まで続けられるようにしたいと意気込んでいます。取材の後には、息子の綾斗くんを連れて畑へ。畑の中を元気に遊ぶ綾斗くんに一つ一つ丁寧に教えていく堀井さんを見て、父から息子に桃への想いは受け継がれていくと感じました。

(2013年4月取材)

大きなお庭が魅力な家。友人・知人を集めて、バーベキューをするのも田舎ならではの楽しみです。

大きなお庭が魅力な家。友人・知人を集めて、バーベキューをするのも田舎ならではの楽しみです。


木の廃材を利用したテレビ台。たとえ廃材でも使い方によって、オシャレな家具に変わります。

木の廃材を利用したテレビ台。たとえ廃材でも使い方によって、オシャレな家具に変わります。


庭の堆肥小屋を利用して、循環型の生活を実践しています。

庭の堆肥小屋を利用して、循環型の生活を実践しています。


取材の時に臨月だった悦子さん。無事に元気な女の子が生まれたそうです。

取材の時に臨月だった悦子さん。無事に元気な女の子が生まれたそうです。


広大な桃畑が広がる笛吹市一宮町。春には一面が桃色に染まり、桃源郷の景色に表情を変えます。

広大な桃畑が広がる笛吹市一宮町。春には一面が桃色に染まり、桃源郷の景色に表情を変えます。


花から実に変わり、収穫の夏に向かって、大きな桃へと成長していきます。

花から実に変わり、収穫の夏に向かって、大きな桃へと成長していきます。


摘果の作業で取り除いた桃の実を見せてくれた綾斗くん。

摘果の作業で取り除いた桃の実を見せてくれた綾斗くん。