甲府盆地 まちなかエリア

JoyFuL No.084

雲海漂う『神秘麗(しびれ)』の大自然の中、
桑と共に生きる

ハン・ソンミンさん
プロフィール

市川三郷町山保
ハン・ソンミンさん(35)
楠 三貴さん(30)
神奈川県平塚市より移住

かつて養蚕が盛んな頃、全国の9割の農家が使用していた桑が『一瀬桑』ですが、
この品種の発祥の地は市川三郷町です。
養蚕が衰退し、放置された桑畑が並んだこの地へ、新たな産業を作る夢を持って
移住したご夫婦がいました。

 「神奈川で健康食品の製造開発をする父が、桑の成分に注目し、桑の葉茶を作っていました。2003年に父が富士八湖である四尾連湖に遊びに来た際に、桑畑が一面に広がる景色を見て、こういうところで仕事がしたいと思ったそうです。その後、地元の方の協力もあり、農協の跡地を借りることができ、晴れて市川三郷町で桑茶の製造をすることになりました。初めは父が平日に単身で来て、建物の改修をしながら、商品開発をしていましたが、2007年に父から電話で『仕事を任せたい』と相談を受けて、2008年に移住しました。」と移住のきっかけを教えてくれたハン・ソンミンさんと楠三貴さんご夫婦。
 しかし夫婦ともに生まれも育ちも都会だったため、移住当初は環境の変化に驚いたそうです。「この村に住み始めた頃は、閉鎖的で、村の伝統を崩してくれるなと冷たい目で見られているように感じましたが、仲良くなると本当に深いお付き合いができます。玄関に箱で野菜が置いてあったり、畑の前を通れば野菜を頂いたり、都会では経験できない貴重な体験ができました。」と三貴さん。出身地の神奈川では土を触る機会がなかったそうです。「小さいころに石川県の母親の実家に行って、おばあちゃんが作っていたキュウリを自分でもいで、洗って食べていた時間がすごく幸せな時間でした。そういう思い出もあって、都会に住むより、田舎に住みたいと思っていました」。

桑茶を市川三郷町の一大産業へ

 父から桑茶の製造を託されて、社名を『一瀬桑のふるさと』の意味を込め『桑郷』に変えました。しかし、初めは取り引き先が少なく、収入も出なかったそうです。「とりあえず手書きで作ったチラシを1日800枚、県内中へ配ることからスタートしました。さらに東京ビッグサイト等のイベントにも参加して営業しました。言葉は足りなかったけど、夢もあったし、商品に自信がありましたので、桑茶の魅力を伝えることができました。本当に大変だったけど、少しずつ取引先が増えました」。そういった営業活動と商品の改良を重ねた結果、県内のメディアに取り上げられ、徐々に反響が広がったそうです。
 桑茶の製造も地元の人が育てた桑の葉を買い取って製造していましたが、高齢化で畑をできる方が少なくなったため、桑の栽培まですることになりました。もちろん桑の栽培は未経験でしたが、地元の人に教えてもらいながら、目で見て覚えていったそうです。「山梨は自然が豊富にあるので、農業をするにあたって非常に恵まれています。ただそれを分かっている世代が70、80代で後継者がいないため、その魅力がだんだん薄れています。私たちは桑茶を市川三郷町を中心にした1つの産業にしたいと考えてます。今年は面積拡大で新たに2万本の苗を植えました。5年後までに10万本を植える予定ですが、そうすると生産量日本一になります。」とハンさんは意気込んでいます。

気持ちに余裕を持てる山梨での暮らし

 「都会の生活はせかせかしていて、ボロボロになるまで働き、余裕がないですよね。でも山梨に住むと、ちょっと大変な時は空も見えるし、夜は星が綺麗で余裕が持てます。今までも仕事が忙しい時には、自然や人が癒してくれて、本来、人間が住むべきところなんだと実感しました。会社から見える風景も、毎日同じように見えるけど、違う顔をしています。それを見ながら、私たちの夢も大きくなりました。」と笑みを浮かべていました。
 雲海漂う『神秘麗』の自然を見ながら、ご夫婦の夢も膨らんでいます。

(2013年4月取材)

一瀬桑のふるさとの意味を込められて名付けられた『桑郷』。

一瀬桑のふるさとの意味を込められて名付けられた『桑郷』。

富士八湖の1つの四尾連湖は古くから龍神伝説があり、『神秘麗湖』とも書かれます。

富士八湖の1つの四尾連湖は古くから龍神伝説があり、『神秘麗湖』とも書かれます。

 

5年後までに10万本の苗を植えて、生産量日本一を目指しています。

5年後までに10万本の苗を植えて、生産量日本一を目指しています。

 

古くから中国で漢方薬の材料に使われる桑。クセがなく、味にもこだわった健康茶です。

古くから中国で漢方薬の材料に使われる桑。クセがなく、味にもこだわった健康茶です。

 

開発・改良を重ねて、お客様のニーズに合った商品展開を心がけています。

開発・改良を重ねて、お客様のニーズに合った商品展開を心がけています。